ガミースマイル

ガミースマイルとは、笑ったときに上の歯ぐき部分が大きく見えてしまう状態のこと。歯ぐきのことを英語でgumといい、歯ぐきが見える顔のことをgummy face（ガミーフェイス）、笑ったときに歯ぐきが目立つ顔のことをgummy smile（ガミースマイル）と呼んでいます。このガミースマイルは、日本人を含むアジア系の人種に多く見られるのが特徴です。

歯科的には、笑ったときに歯ぐきが3～4mm以上露出する状態をガミースマイルと呼んでいます。しかし、ガミースマイルの基準に合致しているからといって、すべての人に治療が必要なワケではありません。大きく見える歯ぐきをチャームポイントや個性ととらえる方もいますし、アイドルやタレントにもガミースマイルの人は多く見られます。しかし、ガミースマイルであることにコンプレックスを感じ、「歯ぐきが見えることで思いきり笑うことができない」「口元をできるだけ隠したい」などと、悩んでいる人がいることも確かです。その場合は、矯正治療によって症状を改善することが可能です。

ガミースマイルになる原因としては、以下のようなものが挙げられます。

ガミースマイルは、骨格や歯が原因となっていることがあります。まず、上顎の骨や歯が下顎よりも前に突き出ていたり、骨が縦に長い場合に見られる上顎突出（出っ歯）である場合。これは先天的な要素も大きく関与しており、親から子どもへと特徴的な骨格・歯並びが遺伝することで、ガミースマイルが引き起こされると考えられます。とくに両親のいずれか、もしくは両親ともにガミースマイルである場合、子どももガミースマイルになる可能性が高くなると言えます。また、上顎突出（出っ歯）は指しゃぶりや口呼吸といったクセも原因となることがあるため、骨格や歯に影響を与えないよう注意することが大切です。

上唇が薄い方は、ガミースマイルになりやすいという特徴があります。一般的に、口のあいた状態では上の歯ぐきは上唇に隠れますが、上唇が薄いと歯ぐきが見えやすくなり、ガミースマイルになってしまうのです。また、上唇挙筋と呼ばれる筋肉の力が強すぎる場合も、ガミースマイルの原因となります。上唇挙筋は笑ったときなどに上唇を引きあげる筋肉ですが、この筋肉の力が強いと必要以上に唇が引きあげられてしまい、歯ぐきが大きく見えてしまうのです。その他、唇が縦方向に短い場合もガミースマイルになりやすくなります。

通常よりも、歯ぐきが発達しすぎているのもガミースマイルの原因です。これは、歯ぐきが発達しすぎて歯に多いかぶさっているケース。骨格や歯に問題はないのですが、覆いかぶさる歯ぐき部分が大きいことで歯が小さく見えるようになり、結果的にガミースマイルになってしまうのです。

ガミースマイルをそのままにしておくことで、何かリスクはあるのでしょうか。以下に、懸念される要素をまとめてみました。

ガミースマイルは見た目だけでなく、口の中の健康にも影響をおよぼすことがあります。その理由のひとつが、ガミースマイルによる歯ぐきの露出。ガミースマイルは一般的な人よりも歯ぐきが見える部分が多く、その分だけ歯ぐきが乾燥しやすくなるのです。出っ歯の場合は、口が閉じにくくなることで口の中が乾燥しやすくなる…といったリスクもあります。口の中が乾燥すると唾液による抗菌作用や自浄作用がうまく働かなくなり、雑菌が繁殖しやすい状態になります。それが原因で悪臭が発生し、口臭に悩まされることがあるようです。

また、歯ぐきや口の中が乾燥すると、むし歯や歯周病菌などが増殖しやすくなります。歯周病になると歯ぐきが腫れあがり、炎症や出血が見られるようになります。すると見た目にも悪影響ですし、歯周病が進行することで起こる強烈な口臭にも注意が必要となります。ガミースマイルの人は意識的に口を閉じるよう心がけ、歯ぐきや口の中が乾燥しないように努めることが大切です。

ガミースマイルをチャームポイントや個性のひとつととらえている人がいる一方で、ガミースマイルをコンプレックスに感じている人もいます。この傾向は成人男性にも見られますが、とくに外見が気になりやすい女性や思春期の子どもたちに多く見られる悩みのようです。ガミースマイルであることを周りに指摘されるなどでコンプレックスを感じ、素直に笑えなくなる…といったケースも少なくありません。

ちなみにガミースマイルに対する印象は、日本と海外で異なります。日本人はガミースマイルに対してそれほど悪い印象は持っていないことが多いですが、海外の人は男女を問わず、ガミースマイルを口元の見た目があまり良くないという印象でとらえているようです。これからさらに国際化が進んでいく現代において、ガミースマイルであることがデメリットになる可能性もあります。もし「将来は海外で活躍したい」「外国人を対象にしたビジネスをしたい」と考えているのであれば、印象を下げないためにも矯正治療でガミースマイルの改善を考えたほうがよいかもしれません。

歯科矯正用アンカースクリューとは、治療に使用する小さなチタン製のネジのことです。
治療期間中は歯槽骨へ設置され、ゴムやチェーンをかけて矯正装置の補助として利用します。アンカースクリューを歯槽骨に設置することで強い支点となり、歯をスピーディーに動かすことが可能。器具を設置する際も短時間で済み、体の負担が少なく、矯正治療後は撤去して跡は残りません。

難しい歯の動きにも対応できるアンカースクリューは、ガミースマイルの治療でも歯列を後ろへ下げたり、上に持ち上げたりする治療によく使われている装置です。以前であれば外科的治療が必要だった症例でも、かわりにアンカースクリューを使用することで治療が可能となるケースが増えています。
矯正用のアンカースクリューはネジのような形をしているため、「矯正用のインプラント」と言われることもありますが、まったく違う治療法です。

骨格的な問題が大きくてガミースマイルになっている場合は、矯正治療と外科手術を組み合わせた外科的治療を行うことが多いです。上あご・下あごのどちらかが大きすぎたり大きく出ていたりなどあごの骨格自体に問題がある場合は、矯正治療だけでは限界があります。あご全体にアプローチすることで、歯列・咬合の改善だけでなく、口元全体の改善をすることが可能。同時に顔貌・輪郭の審美的改善も実現します。
外科矯正でガミースマイルを治療する場合は、上下両方のあごを手術する必要があります。手術で上あごの骨をいったん切り離し、ガミースマイルの改善に必要な量だけ上あごの骨を削り上に持ち上げた状態で固定。その後下あごの骨も左右で切り離して上あごの位置に合わせ、きっちりかみ合う場所で固定します。外科矯正をした方が矯正のみよりダイナミックにガミースマイルを改善できるでしょう。ただしどのくらい上あごを移動させるのが良いかは明確な基準がないため、よく医師と話し合って慎重に決める必要があります。

笑った時に上唇を動か上唇挙筋が発達していて上唇が上がりすぎている場合、ボトックス注射によって治療を行うことでガミースマイルを改善できます。
ボトックス注射には注射部位の筋肉の動きを弱める効果があるため、上唇挙筋を弱めることで笑ったときに上唇の上がりすぎを防止。施術方法は、左右の上唇挙筋に各1点ずつ注射するだけ。所要時間は5分ほどです。施術後2～3日してから徐々に効果があらわれるでしょう。
ボトックス注射は手術ではないので、短時間で手軽に治療する事が出来るのが最大のメリットで、ダウンタイムもありません。ただし作用が3～6ヶ月間と短期間であるため、継続的に注射を繰り返す必要があります。

上唇粘膜切除術とは、上唇の上がる量を少なくすることで歯茎の露出を抑える治療法のこと。上唇と歯茎の間の粘膜を切除して縫い合わせることで、笑ったときに見える歯茎の量を調節します。治療料金の目安は20万円ほどです。短時間の施術ではありますが、手術が必要となります。
粘膜切除術がおすすめなのは、歯や骨格が原因ではなく単に上唇が上がりすぎている人です。つまり歯並びは良く、歯茎部分が盛り上がってなくて出っ歯でもない人。歯や骨格が原因の場合、上唇粘膜切除術をしてもさほど効果を感じられず、状況によっては後戻りをしてしまうなどのトラブルになるケースも。医師とよく話し合い、自分の状態が上唇粘膜切除術によって改善するのか理解した上で治療を行うようにしましょう。
メリットは1回の施術で効果が長く接続することや、唇の裏側の手術のため傷口が目立ちにくいということ。もし上唇挙上筋が発達してしまった場合は少し後戻りする可能性があります。

歯茎が原因の場合、歯肉の高さのことを指すガムラインを整えることでガミースマイルを改善します。歯肉切除（歯肉整形）とは、歯に覆いかぶさっている歯肉部分を切除することで歯を大きく見せて歯茎を目立たなくする治療法。レーザーや歯肉拗音バーで歯茎をカットしていき、5分ほどで治療は終了します。術後の痛みや腫れも少なく、治療料金の目安は3～5万円と比較的安価です。
ただし歯槽骨は整形しないため、歯肉の切除のみでは術後の状態をキープすることは難しく、術後数ヶ月ほどで後戻りを起こします。実はガミースマイルのような歯茎のラインを整える目的の治療として、歯肉切除はあまり適しているとは言えません。一時的にはキレイな状態に整っても元に戻ってしまうからです。歯の根元が黒くなるブラックマージンの治療や、一時的に歯茎のラインを変えたい人や歯のサイズを一時的に大きくしたいといった人に適した治療法です。

歯冠長延長術は歯茎を整えていくという点では歯肉切除と同様ですが、同時に歯を支える歯槽骨の整形も行います。歯槽骨を削り高さや幅を調整することで歯の見える部分の大きさを整え、歯茎を目立たなくさせます。歯の大きさが小さかったり、歯茎が歯に覆いかぶさってたりすることが原因でガミースマイルを生じている場合に向いている治療法です。
デメリットとしては、調整できる量に限りがあり、知覚過敏や虫歯のリスクが高まることがあること。また、患部が腫れるなどのダウンタイムが生じる場合もあります。
ガミースマイルは歯の大きさや歯並びの悪さなど、複数の原因が同時に起因していることが少なくありません。歯冠長延長術はほかのガミースマイルの治療と併用されることが多いのも特徴のひとつです。例えば歯冠長延長術と上唇粘膜切除術を一緒に行うことで、歯の大きさと歯茎の位置、上唇の動く範囲を同時に治療できます。

ガミースマイルの一番の問題は、本人がコンプレックスを持ってしまい人前で思いっきり笑うことができないということ。中には性格まで消極的になってしまう人もいます。コンプレックスを抱え続ける人生は辛いものでしょう。
しかしガミースマイルをしっかり治療すれば、笑ったときに歯茎が見えなくなります。コンプレックスが解消され、笑顔に自信が持てるようになるでしょう。人前でも歯茎を気にせず思いっきり笑えるようになります。性格もどんどん明るく変化していく人もいるのではないでしょうか。

歯並びが良くなることもメリットです。矯正治療によって歯並びが改善し、噛み合わせが良くなるでしょう。嚙み合わせが悪いと、耳鳴りや難聴、めまい、頭痛、肩こり、手足の関節痛、腰痛、坐骨神経痛など全身のあちらこちらに症状が出る場合もあります。噛み合わせが良くなることで、全身の健康につながるでしょう。

骨格や歯の生え方などが原因のガミースマイルを、セルフトレーニングで治すことは難しいでしょう。ただし表情筋トレーニングによって歯茎が見えないような笑顔を作り、隠すことは可能です。具体的な方法についていくつか紹介します。

1. 割りばしかストローを奥歯で咥える
2. 咥えたまま口を「い」のカタチにし、降格をできる限り上げる
3. そのまま30秒キープ
4. 上げた口角を戻して10秒休憩
5. 1日1回、3セット繰り返す

1. 軽く口を開き、上唇と下唇を口の中に巻き込んで8秒間止める
2. 巻き込んだ状態で口角を頬骨に向かって引き上げる
3. きついと感じたところで8秒間キープ
4. ゆっくり元に戻す
5. 1日2回、5セット繰り返す

1. 思い切り唇を横に引っ張るように「えー」の口をキープ
2. 盛り上がる頬の筋肉に人差し指をあてて、軽く押さえる
3. その後「うー」の口にして唇をすぼめる
4. 1日2回、10セット繰り返す